島本和彦主催[HOOP HYSTERIA]バスケットボールファンクラブ

SHAWN KEMP THE REIGNMAN(ショーン・ケンプ/ザ・レインマン)

1988年のアメリカのハイスクール・バスケットボール界はなかなか見応えのあるプレイヤーを輩出していた。
西海岸のカリフォルニアのシミバレーからドン・マクレーン(208cm)、ロサンジェルスからクリス・ミルズ(198cm)、バージニア州からアロンゾ・モーニング(208cm)、ニューヨークのバッファローからクリスチャン・レイトナー(211cm)、ミズーリ州カンザスシティーからアンソニー・ピーラー(193cm)、サウス・カロライナ州からスタンリー・ロバーツ(213cm)そして忘れてはならないインディアナのミスターバスケットボール、エルクハート高のショーン・ケンプが名を連ねていたのである。
もちろん全員、ハイスクール・オールアメリカン(高校優秀選手)に選ばれており、有力校に進学が決まっていた。

マクレーンはUCLA。ミルズとケンプがケンタッキー大。モーニングはジョージタウン大。レイトナーはデューク大。ピーラーはミズーリ大。ロバーツがLSU。いずれ劣らぬNCAAの名門校ばかりだった。
4年後にはハイスクールのスーパースターたちは、カレッジのスーパースターに名を変えNBAにドラフトされることは確実視されていたのである。
事実、1992、93年ドラフトに全員が1巡目指名をされ、NBAの荒波に3年ももまれるとほぼ全員がエース級の活躍をしているのである。

しかし、ケンプだけは違った。進学の決まっていたケンタッキー大がリクルート(選手勧誘)に関するNCAAの規約違反が発覚したため、バスケットボールシーズンの始まる前に大学をやめてしまった。一時期テキサスのトリニティーバレー・コミュニティーカレッジに行き、ドラフトを待った。1989年ドラフト1巡目17位にシアトル・スーパーソニックスに指名され、入団している。
大学でのプレイ経験なしにプロに入ったプレイヤーはNBA史上5人目のことで、それはジョー・グラボスキー、モーゼス・マローン、ビル・ウィロビー、ダリル・ドーキンスとこのケンプである。一般的にNBAでハイスクールから直接入団した選手が活躍するのは難しいといわれている。それは学歴が問題になるのではなく、未成熟な身体(ボディ)と精神(メンタル)では、激しい弱肉強食の世界であるプロでは生き残っていけないからなのだ。そして19歳という年齢である。

しかし、ケンプには208cm、111kgという素晴らしいボディと、優れた運動能力があった。
カレッジで鍛えあげられる身体と、バスケットボールのファンダメンタル(基礎)と知識を、NBAという大学で学んでいくという方法が可能な素質をすでに持ち合わせていたのである。
93年のユタのオールスターにコーチ推薦で選ばれた時にはすでにNBAで4年の経験を積んでいたが、ケンプは「はじめからずっと考えていたんだ。僕は大学でのプレイの経験はないけれど、NBAの経験豊かなベテランプレイヤーとともに、一生懸命に練習や、ゲームを数多くこなすことさえすれば、必ずより高いレベルに到達するんじゃないかってね。実際、それを今まで実行してみて、はっきり分かったんだ。判断は正しかったってね」と語っている。
ルーキーシーズンには81試合に出場、1試合平均13.8分プレイし、6.5得点をあげているが、2年目のシーズンには同じく81試合、30.1分のプレイングタイムで15.0得点とアップ、3年目以降も得点力は上昇し続けている。これは、シアトルがいかに大事にケンプを育てているかがわかる例にもなるが、ケンプの前記した談話にもある”一生懸命”というものの表れでもあろう。

ケンプのプレイを一度でも見たことのある人ならば絶対に感じるはずだ。ものすごい身体能力を秘めたアスリートで、まだ、25歳なのだということを考えると空恐ろしいと。
あるスカウトは「彼は早くもスーパースターのであり、何かを起こすことのできるプレイヤーなのだ。ゲームの本当のフィーリングをつかむのが早いし、さらにハードにプレイし続ければ、もっともっと良くなることは間違いない」と語る。また、チームの関係者は「ケンプは外角からのシュートとパスの技術を伸ばす必要がある。だが、すでに十分パワフルだし、走れるし、そしてブロックショットも素晴らしい。彼はゲームではまだ幼いところもある。しかし、慣れるにしたって、臆病さもなくなってきているし、何かを見、経験するにつれて、さらにプレイはアップするだろう」という。

208cmの長身を折り曲げ、低く身構えて、足を大きく開いてオフェンスを鋭い目ででにらみすえる。94年の世界選手権ではディフェンスでも相手を威圧していた。もちろん、ボールが見えないほど早いパワフルな”ジャングル・ダンク”も健在だった。20代後半になった時のショーン・ケンプは、あの、マイケル・ジョーダンを彷彿とさせるものになっていることは間違いないと思うのは私だけではないだろう。

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